わたしが訪問理美容を始めた、きっかけになった出来事があります。
それは25年前。祖父との思い出でした。
小樽市内に入院していた祖父。
自分は理美容の仕事をしていたので、祖父が喜ぶことをしたいと思い、
病院に頼み込んで、祖父の髪を切らせてもらうことにしました。
その後に起こったことが、わたしを変えました。
髪を切りに行った数日後、看護師さんから、そんな電話がありました。
実は、祖父と同室の他の患者さんも散髪してきたんですが、
看護師さんが弾むような声で話してくれたのを今でも鮮明に覚えています。
「部屋は、宴会のようににぎやかになってるよ!」。
そう、そのとき改めて思ったんです。
髪を切る仕事は、「本当に人様を笑顔にできるんだ」と。
この出来事がきっかけとなり、
わたしは本格的に訪問理美容の仕事を始めたわけです。
ですが、そこには数々の障害がありました。
施設や病院、お客様の自宅の場合、
お店のような自由度はありません。
設備や資材も十分ではありません。
それでも、
短い時間でも、お店に来てもらったのと同じくらいの
満足感を感じて欲しい。
そして、お客様に満足してもらうには
サービスの質が求められます。
訪問理美容に携わって25年。
施術をさせていただいたお客様は延べ10万人を超えます。
とある病院では1日で数十人の方の髪を切らせていただくこともあります。
その経験から、本当に多くのことを学びました。
そのために、訪問理美容に特化した
いろいろなオリジナル商品を開発しました。
・車椅子やベッドのままで施術をしても切った髪が残りづらい大判クロス
・ベッドに寝たままでもシャンプーができる専用のシャンプー資材セット
・蒸しタオルがなくても気持ちよくひげ剃りができる専用のシェービングクリーム
そして、今はコロナ対策として
訪問理美容の現場では
使い捨てのクロスや資材も作りました。
全てが「お客様に喜んでもらいたい」の気持ちから始まりましたが、
結果として、理美容しとしても効率よく施術ができるようになりました。
効率が良いと
時間的余裕もでき、ひとりひとりの利用者さんや患者さんと
向き合えるようになり、結果、良いサービスが提供できる
好循環を産んでいます。
ひとりでも多くの方々に
えみっと(笑人)になってもらいたい。
その想いで、これからも訪問理美容の現場で精進していきたい。
そう思っています。
一般社団法人
北海道理美容福祉協議会
理事長 山下秀治